クローン病の専門医が回答
クローン病は主に小腸や大腸などに炎症が起こる病気です。炎症が起こると、小腸における栄養の吸収、大腸における水分の吸収がさまたげられるため下痢や腹痛などの症状を伴うことがあり、体調によっては食事に注意が必要な場合があります。
このページでは、日々の食事について、クローン病の患者さんからよくいただくご質問に回答します。あなたが送りたいライフスタイルを実現する一助として、食生活でのお悩みが少しでも解消できれば幸いです。
※IBD(Inflammatory Bowel Disease):炎症性腸疾患。一般に潰瘍性大腸炎とクローン病のこと。
クローン病の専門医が回答
クローン病は主に小腸や大腸などに炎症が起こる病気です。炎症が起こると、小腸における栄養の吸収、大腸における水分の吸収がさまたげられるため下痢や腹痛などの症状を伴うことがあり、体調によっては食事に注意が必要な場合があります。
このページでは、日々の食事について、クローン病の患者さんからよくいただくご質問に回答します。あなたが送りたいライフスタイルを実現する一助として、食生活でのお悩みが少しでも解消できれば幸いです。
クローン病の症状には波があり、症状が悪化している状態を「活動期」、症状が落ち着いている状態を「寛解期」といいます。活動期と寛解期では、食事で気をつけるポイントが異なるため、分けて記載しました。
患者さん一人ひとりに合う食品・合わない食品がありますので、まずはそれを知ることが大切です。症状が落ち着いている状態「寛解期」では食事制限はありませんが、症状が悪化している状態「活動 期」や狭窄(腸管の内腔が狭くなる)があるときは、食事に関して気をつけるポイントがありますのでQ1の回答も併せてご参照ください。
食事内容と体調を記録しておくと、何を食べてどんな症状がでたのかを振り返ることができます。続けられそうな簡単なことからはじめてみてはいかがでしょうか。
(例)
腸を刺激する食品(香辛料やカフェインなど)の場合は特に注意して、少しずつ試して様子をみるようにしましょう。食べると下痢をしやすくなるといった体調変化がわかったら、過量の摂取は控えましょう。食事の量によっても体調変化が起きる場合がありますので、ご自身に合う食事の量も意識してみましょう。
迷ったときにはひとりで悩まずに、主治医や看護師、管理栄養士に相談しましょう。
脂質は体を動かすエネルギーの源となるエネルギー産生栄養素*のひとつで、ホルモンや体の細胞をつくるときに必要な栄養素です。しかし、消化に時間がかかるため、特に活動期には下記のポイントを意識してみましょう。
*エネルギー産生栄養素:エネルギーをつくる栄養素のこと。炭水化物(糖質・食物繊維)、脂質、たんぱく質を指す。
たんぱく質は体を動かすエネルギーの源となるエネルギー産生栄養素*のひとつで、筋肉や皮膚、臓器などがつくられるときに必要な栄養素です。
魚に関しては、食べても問題ないと言われていますが、バターなど脂質を使って味つけをするときや脂身が多い魚を食べるときは、食べすぎないように量を意識しましょう。
肉に関しては、種類によっては脂質を多く含むものもありますので、脂質の量にも注意しましょう。
*エネルギー産生栄養素:エネルギーをつくる栄養素のこと。炭水化物(糖質・食物繊維)、脂質、たんぱく質を指す。
たんぱく質は動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の大きく2つに分けられます。
魚や肉、卵、牛乳、乳製品など
大豆、納豆、豆腐、おから、豆乳など
脂質が多い肉をとるときには、以下のような工夫をしてみましょう。
一般的に、食物繊維には、腸の動きを活発にして便を出しやすくする、善玉菌を増やして腸内環境を整えるなどのはたらきがあります。食物繊維は小腸で消化・吸収されず、そのまま大腸まで届けられます。
炭水化物は、体を動かすエネルギーの源となるエネルギー産生栄養素*のひとつで、糖質と食物繊維でできており、エネルギー源となるのは糖質です。糖質は脂質やたんぱく質に比べて消化・吸収が早く、すぐにエネルギーになりますので、必要量をとることが大切です。厚生労働省では、1日の総摂取カロリーの50~65%は炭水化物からとることを目標としています2)。
*エネルギー産生栄養素:エネルギーをつくる栄養素のこと。炭水化物(糖質・食物繊維)、脂質、たんぱく質を指す。
一般的に、ヨーグルトなどの乳製品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌は、腸内環境の改善を促します3)。
アルコールやカフェインなどの腸を刺激するものをとると、腹痛や下痢を引き起こすことがあります。一方で、このような嗜好品は無理な制限をすることでストレスになる場合もありますので、症状や体調に合わせて上手に摂取するとよいでしょう。
下痢のときに食事や水分をとると、もっと症状がひどくなるのでは?と心配になるかもしれません。通常、小腸で水分はきちんと吸収されていますので、脱水症状に気をつけて、こまめに水分補給をすることが大切です。
体に必要なエネルギー量は普段の活動量のほか、体調によっても変化します。
摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが取れていれば基本的に体重変動は起こりませんので、体調が安定しているときの体重を基本として、大きく減少したときは主治医や管理栄養士に相談しましょう。
*:1日に必要なエネルギー量=標準体重[kg]×30~35kcal(寛解期の場合:25~30kcal)
標準体重=身長(m)×身長(m)×22
例)身長160cmの人では、標準体重は1.6×1.6×22≒56.3kg
1日に必要なエネルギー量は56.3×30~35kcal≒1,690~1,970 kcal
食事会や旅行などのイベントでは、友達や家族と外食を楽しみたいものです。しかし、外食のメニューは自宅での食事よりも脂質やたんぱく質、食物繊維、香辛料が多めで、高カロリーになりがちです。外食をする際は、Q1~Q9も併せて参考にしていただきながらメニューを選んでみましょう。