※IBD(Inflammatory Bowel Disease):炎症性腸疾患。一般に潰瘍性大腸炎とクローン病のこと。

潰瘍性大腸炎ってどんな病気?

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専門医が監修

長堀 正和  先生

長堀 正和 先生

東京医科歯科大学病院
臨床試験管理センター 准教授

ご所属名・役職名は2024年3月13日時点のものです。

大腸の粘膜に炎症が起き、下痢や血便などの症状があらわれる病気

潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患のひとつで、大腸の粘膜に炎症が起きることによりびらん(粘膜がただれている状態)や潰瘍(粘膜がえぐられている状態)ができる原因不明の慢性の病気です。主な症状には、下痢や血便、腹痛、発熱、貧血などがあります。また、さまざまな合併症が発現することがあります。
潰瘍性大腸炎は、厚生労働省から難病に指定されていますが、適切な治療をして症状を抑えることができれば、健康な人とほとんど変わらない日常生活を続けることが可能です。

潰瘍性大腸炎は、「炎症性腸疾患」のひとつ

私たちの体には免疫系という防御システムが備わっていて、ウイルスや細菌などの異物を体内から追い出そうと活動します。このときに異物の侵入部位等の腫れや痛み、発熱などの全身の免疫反応が起こります。この免疫反応を「炎症」と呼んでいます。
炎症は体にとって不可欠なものですが、過剰に起こると体を傷つけることになります。
過剰な炎症を引き起こす原因としては、細菌やウイルスなどの病原体による感染や、薬剤や化学薬品による刺激などが考えられます。
この過剰な炎症が腸に起こる病気を「炎症性腸疾患」といいます。
炎症性腸疾患のうち、感染性腸炎、薬剤性腸炎、虚血性腸炎、腸結核などは、細菌や薬剤などの原因を特定できます。このような場合は、原因を取り除く治療を行います。
しかし、炎症性腸疾患のなかには、免疫反応が過剰に起こる原因がわからないものもあります。潰瘍性大腸炎はそのひとつで、自分に対して免疫反応が起こり、過剰な炎症が続いてしまう病気です。潰瘍性大腸炎では、炎症を引き起こす体内物質が、通常よりも多く産生されていると考えられています。
潰瘍性大腸炎と似た病気で同じく原因不明なものに、クローン病があります。潰瘍性大腸炎は大腸だけに炎症が起きるのに対して、クローン病は口から肛門までのどの場所にも炎症が起こる可能性があることが特徴です。

炎症性腸疾患の分類

炎症性腸疾患の分類

日比紀文ほか編:IBDを日常診療で診る, p24. 羊土社, 2017を参考に作図

潰瘍性大腸炎の患者数は推定約22万人

潰瘍性大腸炎は、以前はまれな病気とされていましたが、2014年には日本の推定患者数は約22万人となりました。増加の背景には、内視鏡による診断法の進歩や、潰瘍性大腸炎に対する認知度の向上が考えられますが、食事を含む生活習慣の西洋化も影響していると考えられています。

※ Murakami Y, et al. J Gastroenterol. 54(12): 1070-1077, 2019

推定発症年齢は、男性は20歳~24歳、女性は25歳~29歳で最も多くなっていますが、小児や高齢者に発症することもあります。また、男女比は1:1となっています。

潰瘍性大腸炎の推定発症年齢

潰瘍性大腸炎の推定発症年齢

難病情報センター:潰瘍性大腸炎(指定難病97)(https://www.nanbyou.or.jp/entry/62)(2024年3月13日アクセス)

コラム
指定難病=命に関わる病気!?

潰瘍性大腸炎は、根治に至る治療のない病気ではあっても、ただちに命に関わる病気ではありません。
潰瘍性大腸炎は、原因が不明であることや、国が支援して原因や病態を解明し、治療体系を確立しようという狙いから難病に指定されています。

気になることがあれば、積極的に医師に相談を

潰瘍性大腸炎の患者さんにとって、日々の悩みや人生の目標にあわせてどう疾患と向き合うかは、とても大切なことです。

潰瘍性大腸炎をはじめとした炎症性腸疾患は、長く付き合っていく疾患です。疾患・治療について気になることがあれば積極的に医師に相談しましょう。
相談する際は、ぜひ相談サポートカードも活用してみてください。

潰瘍性大腸炎の基礎知識を知る

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