専門医が回答
就職活動はどうすればいいの?治療と仕事の両立って可能なの?先輩患者さんは、企業や社会の中で、どんな働き方をしているのでしょうか。
面接段階で病気を伝える男性40代 潰瘍性大腸炎歴24年
就職活動の面接では、選考が進んだ段階で「月1回くらいのペースで通院している」という話をしました。入社した後で「病気だったのか」と見られるのが嫌だったので。一つの会社でしっかり仕事をしていくことを考えると、長くお付き合いする会社なので、早めに言っておこうという判断でした。会社の有休制度を使って通院できるという話も聞けて安心できました。
海外出張は準備を入念に男性20代 潰瘍性大腸炎歴5年
営業の仕事で海外出張に行くこともしばしば。もともと海外向けの仕事に興味があり、バリバリ働いてみたいと、就職したころから思っていました。海外に行くときは、胃腸薬や下痢止めを持参して、万が一を考えて、現地の病院も調べてから行きます。水や食べ物が大丈夫かも重要なポイントです。
手術を機に働き方を見直す女性20代 クローン病歴12年
仕事のストレスも重なり体調を崩して、緊急入院後、手術をすることに。この手術をきっかけに、勤め先を退職しました。こうなるまで自分を追い込んでしまった仕事に対する考えが変わったからです。「こんなに体を壊してまで働いても、私の仕事を代わりにする人はいる、でも私の代わりはいない」と思ったときに、体の悪いところを切ってリセットするとともに、仕事も1回リセットして再出発しようと考えました。
発症後も変わらず勤務男性30代 クローン病歴6年
病名が分かった段階で、会社にはすぐ報告しました。入院することになっても「そういう事情で入院しているのか」とすぐに分かってもらえるようになりました。仕事中はトイレが一番の問題ですが、それも自由に行けるし、病気になって仕事上変わったことは、ほとんどありません。
健康第一男性30代 クローン病歴3年
最近気に入っているフレーズが「健康第一、仕事は二の次」。仕事も人生の一部で全てじゃない。「仕事残して疲れ残すな」。この仕事を残して死んでも代わりにやる人がいると思って、体のことを考えて無理をしないことも大切だと思う。時間をどのように使うかは自分で決めることだから。
体への興味で薬学部に進学女性10代 潰瘍性大腸炎歴4年
将来の進路を考えたとき、自分の飲んでいる薬や体のことをもっと知りたいと思って、薬学部への進学を決めました。将来病状が悪化して、仕事を休まなくてはならない状況になっても、資格があれば復職がしやすいと思ったのも、理由の1つです。
勤務先からの配慮に感謝女性30代 クローン病歴8年
転職するときに、上司にも職場の人にも病気のことは伝えました。毎日同じ時間にご飯が食べられるようにとシフトを組んでくれたり、体にいい食べ物を振る舞ってくれる人がいたりして、伝えておいて良かったなと思いました。
デスクに成分栄養剤常備男性30代 クローン病歴6年
会社のデスクの引き出しには、成分栄養剤とボトル、成分栄養剤を溶かす水を常備しています。肛門の合併症がひどいので、お尻が痛いとき用に、中央に穴が開いたドーナツ型のクッションも愛用しています。
通勤ルートのトイレを確認男性40代 潰瘍性大腸炎歴24年
新入社員のころは、通勤途中で電車の乗り換えをするたびにトイレに行っていました。そうした経験を踏まえて、通勤ルートのトイレは必ず事前にチェック。出かけるときは早めに出発するよう心がけています。
会社に伝えず就職女性30代 クローン病歴16年
就職をするときは、病気のことは会社に伝えませんでした。キャリアアップしていきたいと思っていたので、足を引っ張る材料を出したくなかったというのが本音です。「病気なんでしょう」「無理しないほうがいいんじゃないの」と気遣われるほうが、自分にとっては嫌だったんです。
会議中にトイレに駆け込む男性20代 潰瘍性大腸炎歴5年
営業会議での発表中に下痢になり、あわててトイレに。出席していた役員に「一体どうしたんだ」という目で見られて、大変気まずい思いをしました。あとから「お客さんのところでもこんなことをやっているんじゃないか」と言っていたと上司から聞かされ、体調管理を徹底しようと再認識しました。
トイレの回数の多さで……男性30代 潰瘍性大腸炎歴20年
明らかにトイレの回数が多いので、会社に隠すのは大変。「トイレによく行くね」と言われたこともありますが、「体質です」と言ってかわしています。会議が長時間連続したときも、こっそり抜けてこっそり帰ってきます。
専門医からのアドバイス
横山薫 先生 北里大学医学部 消化器内科学 講師
ご所属名・役職名は2022年7月13日時点のものです。
就職活動の際に病気のことを伝えたほうが良いのかどうかは、職場毎に状況が異なり、答えがないのが実情です。フレックス制の導入など、勤務日や時間の融通がきく職場でしたら、医療機関への通院もしやすくなります。職場環境や制度などの情報収集をしておくのも良いですね。働いている人は、突然の体調不良に備えて、普段から周囲の人たちと仕事内容の共有をしておくことも大切です。
※病歴は症状の認識ではなく、医師の診断を受けてからの年数です。
※掲載しているコメントは個人の意見であり、すべての方に当てはまるわけではありません。