※IBD(Inflammatory Bowel Disease):炎症性腸疾患。一般に潰瘍性大腸炎とクローン病のこと。

クローン病ってどんな病気?

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専門医が監修

長堀 正和  先生

長堀 正和 先生

東京医科歯科大学病院
臨床試験管理センター 准教授

ご所属名・役職名は2024年3月13日時点のものです。

小腸や大腸などの消化管に炎症が起き、腹痛、下痢、血便などの症状があらわれる病気

クローン病は、1932年にニューヨークのマウントサイナイ病院のブリル・バーナード・クローン医師らによって初めて報告されました。「クローン病」とは、クローン医師の名前から付けられた病名であり、クローン技術の「クローン」とは異なります。
クローン病は炎症性腸疾患のひとつで、主に小腸や大腸などの粘膜に炎症が起きることにより粘膜にびらん(粘膜がただれている状態)や潰瘍(粘膜がえぐられている状態)ができる原因不明の慢性の病気です。主な症状には、腹痛、下痢や血便、発熱、肛門付近の痛みや腫れ、体重減少などがあります。また、さまざまな合併症が発現することがあります。
クローン病は、厚生労働省から難病に指定されています。適切な治療をして症状が落ち着いている状態(寛解期)が維持できれば、健康な人とほとんど変わらない日常生活を続けることが可能です。しかし寛解期になっても症状が悪化(再燃)することがあります。症状が悪化している状態(活動期)が続くと栄養障害や貧血などの全身の症状があらわれることがあるので、長期にわたる治療や定期的な検査を続けることが重要です。
※Van Hootegem P, Travis S: J Crohns Colitis. 14(6): 867-871, 2020

クローン病は、「炎症性腸疾患」のひとつ

私たちの体には免疫系という防御システムが備わっていて、ウイルスや細菌などの異物を体内から追い出そうとします。このときに異物の侵入部位等の腫れや痛み、発熱などの全身の免疫反応が起こります。この免疫反応を「炎症」と呼んでいます。
炎症は体にとって不可欠なものですが、過剰に起こると体を傷つけることになります。
過剰な炎症を引き起こす原因としては、細菌やウイルスなどの病原体による感染や、薬剤や化学薬品による刺激などが考えられます。
この過剰な炎症が腸に起こる病気を「炎症性腸疾患」といいます。
炎症性腸疾患のうち、感染性腸炎、薬剤性腸炎、虚血性腸炎、腸結核などでは、細菌や薬剤などの原因を特定できるため、原因を取り除く治療を行います。
しかし、炎症性腸疾患のなかには免疫反応が過剰に起こる原因がわからないものもあります。クローン病はそのひとつで、自分に対して免疫反応が起こり、過剰な炎症が続いてしまう病気です。クローン病では、炎症を引き起こす体内物質が、通常よりも多く産生されていると考えられています。
クローン病と似た病気で同じく原因不明なものに、潰瘍性大腸炎があります。クローン病では口から肛門までのどの場所にも炎症が起こる可能性があるのに対して、潰瘍性大腸炎は大腸だけに炎症が起きることが特徴です。

炎症性腸疾患の分類

炎症性腸疾患の分類

日比紀文ほか編:IBDを日常診療で診る, p24, 羊土社, 2017を参考に作図

クローン病の患者数は推定約7万人

クローン病は、以前はまれな病気とされていましたが、2014年には日本の推定患者数は約7万人となりました。増加の背景には、内視鏡による診断法の向上や、クローン病に対する認知度の向上があると考えられますが、食事を含む生活習慣の西洋化も影響していると考えられています。

※ Murakami Y, et al.: J Gastroenterol. 54(12): 1070-1077, 2019

推定発症年齢は、男性は20歳~24歳、女性は15歳~19歳で最も多くなっています。小児期から高齢者まであらゆる年代で発症する可能性がある疾患です。また、男女比は2:1で、男性に多くみられる病気です※※

※※ 難病情報センター:クローン病(指定難病96)(https://www.nanbyou.or.jp/entry/81)(2024年3月13日アクセス)

クローン病の推定発症年齢

クローン病の推定発症年齢

難病情報センター:クローン病(指定難病96)(https://www.nanbyou.or.jp/entry/81)(2024年3月13日アクセス)

コラム
指定難病=命に関わる病気!?

クローン病は、根治に至る治療のない病気ではあっても、ただちに命に関わる病気ではありません。アメリカのアイゼンハワー元大統領もこの病気に悩まされましたが、80歳近くまで長生きしました。
クローン病は、原因が不明であることや、国が支援して原因や病態を解明し、治療体系を確立しようという狙いから難病に指定されています。

気になることがあれば、積極的に医師に相談を

クローン病の患者さんにとって、日々の悩みや人生の目標にあわせてどう疾患と向き合うかは、とても大切なことです。

クローン病をはじめとした炎症性腸疾患は、長く付き合っていく疾患です。疾患・治療について気になることがあれば積極的に医師に相談しましょう。
相談する際は、ぜひ相談サポートカードも活用してみてください。

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