IBDとはたらくことを両立するために、患者さんはどのような工夫や心がけをしているのか?
IBD歴約20年、フリージャーナリストの佐々木俊尚さんにお話を聞きました。
IBDとともにはたらく
佐々木俊尚さんのREAL
STORY
無理をせず、少しずつ食生活を見直す
食生活がずっと乱れていたので、潰瘍性大腸炎の治療が少しでも良い方向に向かうよう、食生活を抜本から見直そうと考えました。
これは私の場合ですが、スパゲッティではなくうどん、パンではなくごはんを食べたりしていました。
その際、厳格に管理しないことが大切です。食生活を厳格に管理しすぎると、リバウンドしちゃうから。
例えば、3品作るなら1品は自分の好きなものを食べるとか、お浸しとごはんとみそ汁を作ったのなら、もう1品は好きな油もののコロッケを食べるとか。
個人差があると思うので、皆さんの続けられる食生活を実践することが大事だと思います。
不安を和らげるためにも、正しい情報を手に入れる
私が潰瘍性大腸炎になった当時は、病気に関する情報があまりなかったのですが、今はネットに正しい情報が沢山あります。
例えば、IBDは難病の中でも患者数がすごく多いですが、その情報を知っているだけでも、不思議な連帯感を僕は持てたりします。
正しい情報をたくさん仕入れて学ぶと、病気と正しく向き合えるようになると思っています。
自分らしく働くにあたって、強みを見つけることが大事
強みは誰にも負けない強みである必要はなく、自分では三流だと思っていたものが、三流と三流を二つ掛けると、1.5流ぐらいにはなれるというような考え方を持つことが大事だと思います。
自分の中の弱みと強みを計算して、自分の強みがどう発揮できるかってことを考えるのが大事です。
働き方に緩急をつける
あまりにも深刻に「絶対に再燃しないように、絶対に自分のルールを作って守るんだ!」とか、「もし発症したら、この仕事ができなくなっちゃう」と考えすぎないことです。
「再燃したらしばらくサボるか」ぐらいの適当な気持ちを持つことが心のバランスには良いと思っています。
僕の場合「これは面白い良い仕事だからできるだけ完成度を高めよう」と思うときは頑張りますし、「今日は調子が悪いから、このあたりで終わりにしとくか」と緩急をつけて仕事やってきました。それが、健全な心の状態を保てる1つの大きな要因になっていると感じています。
「心の安心」に繋がる習慣や楽しみをつくる
心の余裕を持つために、何か一つでも習慣や楽しみを作ると良いです。
運動をするとか、週に1度はサウナに行ってリフレッシュするとか、僕のように料理が好きな方であれば、食事を和食中心にしてなるべく外でお弁当を買わないとか。「心の安心」を保てる何かを取り入れることが大事です。
ワークシックバランスという考え方を意識する
社会全体を「病気の人」と「病気じゃない人」にきっちりきれいに分けようとする発想が世の中にはまだまだ根付いています。
ですが本来、明確に分かれることはなくグラデーションになっているんです。例えば、障害一つをとっても、生活に支障がある障害から、それほど支障をきたさない軽い障害もあります。
もちろん、重い病気で入院していると働けないケースが大半ですが、今後ひょっとしたら病床でできる仕事も増えてくるかもしれません。
「ワークシックバランス」はまさにこの考え方で、無理なく本人の状況や選択に応じて、普通の仕事から小さな仕事まで、その人に合わせた働き方ができる考え方・社会の在り方が、僕はとても大事だと思います。