セッション2特別講演

就労支援のプロが語る、
“したいことを
続ける”ためのセルフマネジメント術

セルフマネジメントの重要性

IBDの患者さんからお話を伺うと、“したいことが続けられない”理由として、主に3つのストレスが関係しています。

  • 1対人関係によるストレス

  • 2就労負荷(体調を崩し休職や離職を余儀なくされる)によるストレス

  • 3周りから疾病理解が得られないことによるストレス

“したいことを続けていく”ためには、これらのストレスをセルフマネジメントしていくことが大切です。

セルフマネジメントは就職活動において重要で、その鍵となるのが「言語化」です。自分の状況や希望を言語化し、就職希望先にわかりやすく伝えることによって合理的な配慮を実現するのです。

職場の方にはIBDに関する知識がないことを前提に、「いかに病気のことをわかりやすく伝えるか」、「いかに相手の不安を解消できるように伝えられるか」が就職の際の大きなポイントです。

それでは、実際にどのようなことを言語化する必要があるのでしょうか。その要素は次の3つに大別できます。

客観的に把握し言語化したい3要素

自分のこと

まず一つ目は「自分のこと」の言語化です。「どのようなことが引き金となり体調が崩れるのか」、「体調が崩れるとどのような症状が現れるのか」、「リカバリーにはどのような対処が必要で、それに要する期間はどのくらいか」等を把握しましょう。そして、公私のバランスや自己実現のためには、どの程度働くのが適しているかも含め、「はたらく意味」についても考えてみましょう。また、自分の強みについても棚卸ししてみるといいですね。得意なことや好きなことの傾向をつかんで、就職につなげていく、といった可能性が広がります。

病気の状態
必要な配慮

二つ目は、「病気の状態」の言語化です。伝え方によっては、相手に「この人は本当に働けるのかな」、「うまくサポートしていけるのかな」と誤解や不安を生じさせてしまう可能性があるので、注意が必要です。例えば、トイレの回数や時間については、「1日10回程度、1回10分」といったように具体的に伝えると、相手にもイメージしてもらいやすくなるでしょう。また、「最近は日本でも増えてきている病気で※1、それほど珍しいことではありません」といった言い方でも、相手の持つ「難病」というイメージを多少和らげることができるかもしれません。

サポーター

三つ目は、「サポーター」への言語化です。主治医の先生、栄養士、職場の方、ご家族や友人等、ストレスをやわらげてくれるサポーターが身近にいらっしゃると思います。そういった方々に対し、「どのようなときに、どのようなサポートを求めたいのか」、事前に自分の中で整理してみてください。

※1:飯室正樹ほか:第1章IBDとは 1)知っておくべき疫学的情報, IBDを日常診療で診る, 日比紀文ほか編, 羊土社, p.20-23, 2017

セルフマネジメント術で、“したいことが続けられる”人のつながりをつくろう

主治医の先生、ご家族、そして私ども(ベネファイ)のような支援者は、ご自身のことを別視点から客観的に語ってくれる相手であり、就職後のストレスマネジメント上においてもキーマンとなります。また、働きやすい職場環境を作るためには、職場の人とのコミュニケーションが大切です。

“したいことを続ける”ために、セルフマネジメント術を活用し、理解と信頼で結ばれた「人のつながり」をつくることをぜひ意識してみてください。

藤 大介 氏 藤 大介 氏
atGPジョブトレ ベネファイ※2施設長
藤 大介 氏

※2:ベネファイは株式会社ゼネラルパートナーズが運営する、難病専門の就労移行支援事業所です。

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